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10年前のゴアテックスから考える人工物と自己組織

他院で10年前にゴアテックスによる隆鼻術を行った方の修正がありました。

 

シリコンとゴアテックスの長短所については下記をご覧ください。

シリコンプロテーゼとゴアテックス どちらが良いの?①

シリコンプロテーゼとゴアテックス どちらが良いの?②

シリコンプロテーゼとゴアテックス どちらが良いの?③

 

今回の手術で、10年経過してもカプセル拘縮は無く、改めてゴアテックスのメリットを再確認しました。

自己組織による隆鼻ほどガチガチに癒着しておらず、またシリコンのようにカプセルもできていない。

ゴアテックスの弱点と言われる感染も当院では少なく(感染するのはヒアルロン酸の注入回数が多い鼻、修正例)、自然な柔らかい仕上がりを求める方に適しているプロテーゼだと思います。

やはりおすすめの順番としては

 

①オーダーシリコンプロテーゼ

②ゴアテックス

③既製品のシリコンプロテーゼ

だと思います。

「人工物は一生ものか、いずれメンテナンス(入替や抜去)が必要なのか」

という質問を多くいただきます。

 

その答えは「どちらでもありません」です。

メンテナンス(入替や抜去)が必要な理由は

 

①素材

②患者事由

③医師の技術と考え方

 

によりますが、「どちらでもありません」と答えた理由はもっととても簡単に説明できます。

 

人工物を入れた方が年間どのくらいで、人工物のトラブルで取り出したり入れ替えた方がどのくらいかを考えてみましょう。

 

必ずしもプロテーゼを入れたクリニックで抜去する訳ではありませんし、国際形成外科学会の統計調査に協力していないクリニックの方が多い当院であっても感染や拘縮による抜去や入替の症例は全体の1割に満たず、別の理由(希望が変わった、物足りない、高すぎるなど)による他院修正が圧倒的に多いです。

問題と言われるL型プロテーゼはたしかに拘縮による変形が多い傾向がありますが、何十年も(70代~80代)特に修正を要することなく過ごされている患者さん方もたくさんいらっしゃいます。

私も大学病院で働いていた頃は、鼻のプロテーゼ感染などのトラブルで抜去する手術ばかり見てきました。

おそらく他の大学でも、自己組織しか用いないクリニックでも同様でしょう。

 

大学時代は人工物は出来るだけ使用するべきではないと教わりましたし、その理由については今でもそう思う部分もあります。

しかし、人工物を使うな!という立場で働いた経験と、人工物も自己組織も使う美容外科経験を持つ私には、「人工物は絶対ダメ」というのは非常に偏った考え方に映ります。

なぜ人工物の方がメリットが多いのか。

美に対する意識が非常に高く、細かな要望が多い鼻の患者さんにとっては自己組織より遥かに人工物の方が造形しやすくメリットが多くなります。

鼻の手術後の微調整(もっと高くしたい、鼻先を〇〇にしたい、曲がり、左右差など)による再手術率は25%~30%と言われます(直後の再手術という意味ではありません)。

3Dベクトラシミュレーション+型取りを行うようになって当院での再手術率は大幅に改善しましたが、それでも5%~8%程度の方はもう少し〇〇したいと、微調整を希望されます。

 

希望が変わる事は手術を終えて時間が経ち、世の中の流行りが変わってみないと分からないこともあるのです。

全体的にバランスの良い自然な鼻を作ったとしてもその可能性はあります。

 

そういう鼻整形ならではの事柄を考えれば考えるほど、修正のしやすさを考えた治療を行った方が患者さんにとって良いのではないかと考えるに至ります。

自己組織には感染に強いというメリットはあるものの、希望通りの形態に仕上げることが困難であり、その修正はさらに困難を要します。

また、年月と共に変形するリスクは比較的高く、3~5年は問題無くてもその後変形することは誰にも予測できません。

自己組織による隆鼻術は医師にとっても患者さんにとってもそういったリスクがあるのです。

 

このことを理解した上で、どちらかを選択する必要があります。

どちらにもメリット、デメリットがありますが、理解して選択しておけば、「こんなはずじゃなかった、聞いていなかった」と悩むこともなくなります。

自己組織による鼻整形後の修正を依頼されるたびに、いつかこの記事を書かなければならないと思っていましたので、ここに記しました。

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